高級豆から安価な豆まで|世界最大のコーヒー生産国ブラジルでは総生産量の1/3のが作られている

ブラジル産のコーヒーの歴史は、18世紀にポルトガル人によって持ち込まれたのが始まりです。その後、ブラジルはコーヒーの栽培に適した気候や土壌を持つ国として発展し、19世紀には世界最大のコーヒー生産国となりました。今日でもブラジルは世界一のコーヒー生産国であり、その品質は高く評価されています。

では、ブラジル産コーヒーの特徴とは何でしょうか?この記事ではブラジル産コーヒーの栽培方法や味わい、香りなどに焦点を当ててご紹介します。ブラジルのコーヒーの魅力を知ることで、より一層おいしく楽しむことができるでしょう。

300万トンの生産、広大な農園、そして700万人の雇用

膨大な生産量

ブラジルは世界のコーヒー豆生産量の約1/3を占めるコーヒー大国です。

年間に約300万トンものコーヒー豆を生産し、そのうちの75%程を輸出しています。ブラジルが世界最大のコーヒー生産国となったのは19世紀半ばからで、それ以来150年以上にわたって世界のコーヒー市場を牽引してきました。

広大なコーヒー農園

ブラジル国内には約27,000平方キロメートルにわたるコーヒー農園が広がり、約60億本ものコーヒーの木が育てられています。

主要なコーヒー産地は南東部に位置し、ミナスジェライス州とサンパウロ州などが有名。特にパラナ州は1960年代には国内生産量の6割を占めていました。

またエスピリト・サント州はロブスタ種の主要な生産地域として知られています。

大規模な雇用創出

ブラジルでは約350万人の人々が農村のコーヒー産業に従事しており、関連業種を含めると約700万人がコーヒー関連の仕事をしていると言われています。

この大規模な雇用創出は地域経済に大きな貢献をしています。

ブラジル産コーヒーの特徴と精製方法

多彩なコーヒー品種と風味

ブラジルで栽培されているコーヒー豆の75%がアラビカ種で、主な品種は「ブルボン、ムンド・ボーノ、カトゥーラ、カトゥアイ」です。

これらの品種はそれぞれ異なる風味や個性を持っており、産地によっても特徴が変わります。

産地によるコーヒーの特徴

例えば、ミナスジュライス州産のコーヒーはバランスがよくフルーティーで甘味があると評されています。

一方、サンパウロ州のコーヒーは酸味が強く香りが高くエレガントな印象を与えます。

パラナ産のコーヒーは苦味が強くボディが重く力強い味わいです。

残りの25%がロブスタの変異種であるコニロンと呼ばれる品種で、エスピリト・サント州で主に栽培されており、酸味や苦味が少なくマイルドでクリーミーな口当たりが特徴です。

90%をナチュラルで精製

ブラジル産コーヒーの特徴の一つがナチュラル精製法と呼ばれる方法でコーヒー豆を加工することです。

ナチュラル精製法とはコーヒーの果実を収穫したまま日光で乾燥させる方法で、ブラジルでは約90%のコーヒー豆がこの方法で精製されています。この方法のメリットは、水をほとんど使わないことで環境に優しくまたコーヒー豆に果実の甘みや風味を残すことができることです。しかし日光で乾燥させるということは、気温や湿度などの天候に左右されやすく乾燥が不均一になったり、発酵が起こったりして品質が低下する可能性があります。

またコーヒー豆に果実の皮や果肉が付着したままになるため、カビや虫などの汚染物質が混入するリスクも高くなります。

課題に対する新たなコーヒー精製方法

そこで近年注目されている精製方法がウォッシュド式とパルプドナチュラル式です。

ウォッシュド式とは、コーヒーの果実を収穫した後に皮や果肉を機械的に除去し、水で洗浄して乾燥させる方法です。一方、パルプドナチュラル式とはウォッシュド式と同じように皮を除去した後に、果肉を部分的に残して乾燥させ、その後に水で洗浄して乾燥させる方法です。

これらの方法を採用することでコーヒー豆の品質管理はしやすくなりますが、水を多く使うことによる環境への負荷や、洗浄の過程で排出される廃液が汚染物質となって周辺の土壌や水源を汚染するといった別の問題も発生してしまいます。

ブラジルのコーヒーの歴史

  • 1727年:ブラジルにコーヒーが伝わる。フランス領ギアナからコーヒーの種子と苗が持ち込まれ、北部パラー州に植えられる
  • 1761年:リオデジャネイロ州など、栽培に適した気候の地域で本格的なコーヒー栽培が始まる
  • 1850年:ブラジルは世界最大のコーヒー生産国と輸出国になる。奴隷制度が廃止されるまで、約150万人の奴隷がコーヒー栽培の労働力として働かされた
  • 1888年:奴隷制度が廃止される。コーヒー農園主はヨーロッパからの移民を雇用するようになる
  • 1920年代:ブラジルのコーヒー市場は自然独占の状態になり、世界シェアの約80%を占める
  • 1930年代:サンパウロに大きうの移民が流入し、ブラジル最大の都市となる。ブラジル経済は「コーヒー時代」を迎える
  • 1950年代:世界的にコーヒーの生産が盛んになり、ブラジル産コーヒーのシェアが減少する
  • 1960年代:ブラジル経済は依然としてコーヒー産業に依存し、輸出の60%をコーヒーが占める
  • 1989年:国際コーヒー協定(ICA)が崩壊する。コーヒー価格の安定化が失われる
  • 1990年代以降:スペシャリティコーヒーや有機栽培など、品質や環境への配慮を重視したコーヒー生産が増える
  • 2005年:ブラジルのコーヒー生豆の生産量は218万トンで全世界のコーヒー生産量の1/3を占める
  • 2021年:年間のコーヒー生産量が299万トンに到達。輸出量は228万トンに及ぶ
  • 近年:スペシャリティコーヒーやオーガニックコーヒーに注力

ブラジルのコーヒーカルチャー

世界で二番目にコーヒーを消費する国

世界最大のコーヒー生産国のブラジルは、同時に消費大国でもあり、アメリカに次ぎ世界で二番目に多くのコーヒーを消費する国です。

一人当たりの年間コーヒー消費量は約6kgもあり、これは日本人の2倍以上に相当します。

ブラジルコーヒーの定番「カフェジーニョ」

ブラジルではコーヒーの飲み方にも独自の文化があります。

「カフェジーニョ」は真っ黒になるまで深く焙煎し濃い目に抽出したコーヒーで、ブラジルのカフェやバーなどで楽しめます。そのままでは苦すぎるためコーヒーの量以上に砂糖を入れて飲むのが一般的です。

国内消費用の低品質なコーヒーの味わいを紛らわせるために深煎りさせたこの独特なスタイルは、ブラジル国内で広く愛されており、地元のコーヒー文化を象徴するものとなっています。