味は落ちないの?どうやって作る?「カフェインレスコーヒー」の仕組みと美味しさの秘密

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「夜にコーヒーを飲むと眠れなくなるけれど、あの香りに癒やされたい」 「妊娠中や健康のために控えたいけれど、味には妥協したくない」

そんな悩みを抱える方にとって、今や欠かせない存在となったのが「カフェインレス」コーヒーです。最近ではカフェやスーパーでも当たり前のように見かけますが、そもそも「どうやってカフェインを抜いているのか」をご存知でしょうか?

「薬品を使っているのでは?」「味が薄そう」といった不安を抱いている方もいるかもしれません。しかし、現在のつくりかた、「ウォータープロセス」という技術を知れば、その安心感と美味しさに驚くはずです。

今回は、カフェインレスの世界を支える最新技術と、知ると思わず誰かに話したくなるコーヒー雑学をお届けします。

夜でも安心して飲める「カフェインレス」の正体

カフェインレスコーヒーとは、コーヒー豆本来の風味を最大限に残しながら、カフェイン成分だけを90%以上取り除いたものです。

なぜそんなことができるのかというと、コーヒー豆がまだ緑色の「生豆(なままめ)」の状態のときに、特殊な技術を使ってカフェインだけを狙い撃ちして抽出しているからです。

例えば、私たちが普段飲んでいるコーヒーの味わいは、数百種類もの成分が複雑に絡み合ってできています。その中から「カフェインだけ」を抜き取る作業は、かつては非常に困難でしたが、技術の進歩によって「美味しいカフェインレス」が当たり前に楽しめるようになりました。

カフェインを発見したのは誰?文豪ゲーテとの意外な関係

ここで少し面白い雑学をご紹介します。実はカフェインという物質の発見には、あの有名な文豪ゲーテが深く関わっています。

カフェインを世界で初めて分離・発見したのはドイツの化学者フリードリープ・ルンゲですが、彼にその研究を勧めたのがゲーテでした。

『若きウェルテルの悩み』などの名作を遺したゲーテは、無類のコーヒー好きであると同時に、科学にも強い関心を持っていました。彼はルンゲの類まれなる才能を見抜き、自身が愛飲していたコーヒー豆をひと袋差し出してこう言ったそうです。「この豆には、人を興奮させる何かが入っている。その正体を突き止めてくれないか」と。

この出会いがなければ、カフェインの正体が解明されるのはもっと遅れていたかもしれません。私たちのリラックスタイムの裏側には、偉大な文豪と科学者の好奇心があったのです。

名付け親もルンゲ。その由来はとてもシンプル!

ルンゲは成分を突き止めただけでなく、その物質を「Kaffein(カフェイン)」と名付けた張本人でもあります。

彼がその名を選んだ理由は、驚くほどシンプルでした。ドイツ語でコーヒーを指す「Kaffee(カフェ)」に入っている成分だから「Kaffein(カフェイン)。

シンプル。

水だけで抜く!「ウォータープロセス」のつくりかたと仕組み

現在、主流のつくりかたの一つが「ウォータープロセス」です。

ウォータープロセスとは、化学薬品を使わず「水」の力だけでカフェインを除去する手法のことです。

カフェインが「水に溶けやすい」という性質を利用して、以下のような工程で行われます。

  • 「GCE」を作る: まず、生豆を熱湯に浸して、カフェインと美味しさ成分をすべて溶かし出します。その水をカーボンフィルターに通してカフェインだけを除去。これで「カフェインはないけれど、コーヒーの美味しさ成分が満タンの水(グリーンコーヒーエキス:GCE)」が完成します。
  • 新しい豆を浸す: この「GCE」に、まだカフェインが入っている新しい生豆を浸します。すると不思議なことが起こります。水はすでに美味しさ成分で「満タン(飽和状態)」なので、豆の中の美味しさ成分は外に出られません。しかし、カフェインだけは水の中に一滴もないため、豆の中から水へと移動していくのです。
  • 乾燥させて完成 :美味しさをしっかりと保持したまま、カフェインだけが抜けた生豆を取り出し、乾燥させます。

最初の工程で使われた豆は、味もカフェインも出し切ってしまうため製品にはならず、私たちが飲むのは、2番目の工程で美味しさを守り抜いた豆たちなのです。

この方法は、いわば「一度美味しさを水に預けて、不要なもの(カフェイン)だけ捨ててから、美味しさを豆に返し直す」という非常に繊細な技術。薬品を使わないため、お子様や妊婦さんでも安心して飲めるのが最大の特徴です。

「超臨界二酸化炭素抽出法」との違いって何?

ウォータープロセスと並んで、近年注目されているのが「超臨界二酸化炭素抽出法」です。

この2つの違いは「何を使って抽出するか」と「規模」にあります。

  • ウォータープロセス:水を使用。比較的小規模なロットでも加工しやすいため、特定の農園のシングルオリジン豆(こだわり派)によく使われます。
  • 超臨界二酸化炭素抽出法:二酸化炭素に圧力をかけ、液体と気体の中間状態(超臨界状態)にしてカフェインを溶かします。ドライアイスのような物質を使うイメージです。

大規模な設備が必要ですが、豆へのダメージが非常に少なく、コーヒー本来の味わいを完璧に近い状態で保つことができます。

方法特徴安心感味わい
ウォータープロセス水のみを使用。オーガニック認証も多い。◎ 非常に高い〇 豆の個性が伝わる
超臨界二酸化炭素法二酸化炭素を使用。最新のハイテク技術。◎ 非常に高い◎ 限りなく普通に近い
有機溶媒抽出法化学薬品を使用。※日本国内での販売は禁止。△ 低い〇 普通

まとめ:これからのカフェインレスは「製法」で選ぶ時代へ

カフェインレスのつくりかたを知れば、もう「味が薄そう」「体に悪そう」といった不安を感じる必要はありません。特にウォータープロセスは、水という身近な素材を使い、職人技のような工程を経て「安心」と「美味しさ」を両立させています。

ゲーテがその正体を追い求めたカフェイン。現代の私たちは、その刺激だけを上手に取り除き、豊かな香りをいつでも楽しめるという、かつてない贅沢を手にしています。

今夜、寝る前の「安心の一杯」として、カフェインレスを試してみませんか?